【対象】
令和6年度版「新編 新しい算数」
大きくは、3つの理由があります。
(1)平行四辺形は既習の長方形に等積変形しやすいこと
平行四辺形は、分解し、部分の三角形や台形を移動させることにより、既習の長方形に変形しやすい図形です。三角形の場合、直角三角形を除き、面積を求めるには、頂点からの垂線によって2つの直角三角形に分割して、それぞれの直角三角形の面積を求める手順を踏むことになります。これらの手続きは、平行四辺形の場合に比べ、操作が煩雑である上、式変形も単純ではありません。
(2)三角形の面積公式が導きやすいこと
(1)と少し重複しますが、三角形から入りますと平行四辺形の面積公式を導く際も、手続きが煩雑になることが考えられます。三角形の面積公式を利用する考えでは、三角形の面積(底辺×高さ÷2)を再度2倍することになり、低位の子どもには2で割ったものを2倍することは混乱の要因にもなりかねません。平行四辺形から入りますと、三角形の面積=平行四辺形の面積÷2であることから、三角形の面積公式が導きやすいと考えます。
(3)多様な考えが出やすく、子ども自身が既習を活用しやすいこと
このことがいちばん大きい理由と考えます。平行四辺形を先行させる順序ですと、平行四辺形の後に、三角形やその他の図形の面積の求め方を学習することになりますが、三角形や台形などで既習の図形に帰着して考える際、いろいろな選択肢が生まれます。また、その方法も多様です。
一方、三角形から入る場合には、常に三角形に戻って考えればよいという考え方が基本になります。これは三角形から入ることの長所とも言えます。確かに基本図形はすべて三角形に分割することができますので、三角形を基本に考えて図形の面積を求められるという数学的な魅力があります。
また、この単元ではただ図形の面積の求め方を学習するだけでよいのかどうかを考えたとき、この単元は、数学的な見方・考え方を働かせながら算数における学び方を学ぶ場面として、既習を用いて多様な考えによって解決できること、一見異なる多様な考えが最終的に1つの式にまとめて表されることなど、主体的・対話的で深い学びを実現するのに最適な内容と位置づけることもできると考えます。
平行四辺形と三角形、どちらの求積から導入する場合でも、既習を活かすこと、児童の多様な考えを取り上げること、解決方法の検討を通して1つの式(公式)にまとめられることなどをおさえて学習を進めていただくことが肝要かと考えます。