教科書で使用されている書体は明朝体のようですが、「ごんべん」や「しんにょう」などが、一般の明朝体の形とは違っています。なぜこのような特殊な明朝体を使用しているのですか。
【対象】
令和3年度版「新しい国語」

 「新しい国語」の本文書体には、弊社が独自に開発した特別な明朝体を用いています。この明朝体についてご説明する前に、まずはと中学校の教科書の、本文書体の違いについてご説明します。
 では、多くの教科書の本文書体に「教科書体」が使われています。教科書体は、筆遣いや字形を書き文字(筆写の場合の文字)に近づけたもので、国語や書写で学習する文字との齟齬がなく、文字の書き方を学習していく小学生が使用する教科書に最も適した書体といえます。一方、中学校では、多くの教科書の本文書体に「明朝体」が使われています。明朝体は、一般に最も可読性(読みやすさ)に優れているとされ、に比べはるかに文字量の多くなる中学校の教科書に適した書体といえます。また、新聞や書籍をはじめ一般社会では、明朝体が圧倒的に多く用いられており、社会生活に慣れるという点でも、中学校から明朝体で学習していくことが適切だと考えられます。
 しかし、明朝体は可読性に優れている反面、筆遣いや字形が書き文字とは違うため、文字の書き方の学習に適した書体ではありません。例えば、「しんにょう」や「心」「令」などの文字では、明らかに形が違います。また、「いとへん」は6画で書きますが、明朝体では「折れ」の部分が2画に見え、8画で書くかのように見えてしまいます。中学校の国語では漢字を新たに1110字も学習しますが、これらの漢字を明朝体で学習してしまうと、筆遣いや字形を間違えて覚えてしまうことになりかねません。
 そこで、弊社では、中学校国語・書写の教科書用に、筆遣いや字形を書き文字に近づけた特別な明朝体を開発しました。教科書体と明朝体との中間ともいえる書体で、明朝体の可読性と教科書体の筆遣い・字形の正しさを兼ね備えた書体です。「しんにょう」などの違いが分かりやすい部分だけでなく、例えば「ごんべん」の1画目(明朝体では「横画」だが、書き文字では「点」)など細かいところにまで注意を払って制作しています。一般の明朝体を見慣れている大人にとっては、最初はやや違和感があるかもしれませんが、学習上の効果を優先して使用している書体ですので、なにとぞご理解いただきたいと思います。
 なお、「新しい国語」の本文書体は前述の特別な明朝体ですが、漢字を学習する「漢字道場」や新出漢字欄(脚注・後注)では、書き文字に最も近い教科書体を使用しています。また、明朝体と教科書体との違いや、「新しい国語」で使用している特別な明朝体については、教科書1年33ページの「漢字道場1 活字と書き文字・画数・筆順」の中で簡単に説明しています。
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