【対象】
令和3年度版「新しい国語」
まず、会話文の2行目以降の1字下げの有無についてご説明します。
の国語教科書では、明治36年の第1期国定教科書以来ずっと、会話文の2行目以降を1字下げる書き表し方が採られてきました。戦後の教科書は、この国定本の伝統を踏襲してきました。段階では、2行目以降を1字下げたほうが会話文と地の文とがはっきり区別できて読みやすいという配慮があったものと考えられます。
ただし、これは教科書独特の表記法で、書籍・新聞・雑誌などでは、2行目以降を1字下げないのが一般的です。ちなみに、旧制中学校用の教科書は尋常用ほどには統一されておらず、2行目以降を1字下げない形式が年代に関係なく見られます。
中学校段階では、会話文と地の文との区別を強調することより、一般的に通用している表記法に慣れることを優先し、2行目以降を1字下げない書き表し方を採用しています。この・中学校での使い分けは、各社の国語教科書に共通しています。
次に、会話文の最後の句点の有無についてご説明します。
教科書で句点を付けているのは、「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」(昭和21年3月、文部省発行)の記述に基づきます。ここには、〈「 」(カギ)の中でも文の終止にはうつ。〉と記され、〈「どちらへ。」「上野まで。」〉という例文が挙げられています。この資料は、「言葉に関する問答集 総集編」(平成7年、文化庁)によると、「現在でも、公用文、学校教育その他で参考にされる場合が多い」とされています。
一方、書籍・新聞・雑誌などでは、かぎ括弧の直前の句点を省くことが広く行われています。その理由としては、句点がなくてもかぎ括弧によって区切りが分かることや、省くほうが限られた紙面に盛り込める文字量が増えることなどが考えられます。