【対象】
令和3年度版「新しい国語」
確かに、一般の書籍・新聞・雑誌などでは、書名を示す際に『 』を用いることが広く行われています。『 』を用いることで、それが書名であることをより明確に示せるという利点があるためかと思われます。ただし、書名ではなく作品名(あるいは論文名など)を表す際には、書名と区別して「 」を用いるということもよく行われています。
書名と作品名で書き分ける場合には、一見同じ名称でも、短編集の書名としては『走れメロス』と書き、単独の作品名としては「走れメロス」と書くことになります。1冊の本が1編の作品から成っている場合には、それを書名として扱うか作品名として扱うかによって、『坊っちゃん』「坊っちゃん」と書き分けることになります。
教科書では、作品名を示す場合が多いといえますが、書名を示す場合だけ『 』を用いるとなると、見かけ上の不統一感が生じたり、どちらを使うべきかの判別がしにくい事例がしばしば出てきたりすることが考えられます。
また、学校教育において参考にされることの多い資料である「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」(昭和21年3月、文部省発行)には、かぎ括弧の中で更にかぎ括弧を用いる場合に二重かぎ括弧を用いる旨が記されていますが、書名や作品名については特段、二重かぎ括弧の使用を促す記述はありません。
以上のようなことから、「新しい国語」では、書名を示す場合であっても一律に「 」を用いています。