歴史的仮名遣いの音読法の指導では、「au」は「o」を長音化させて音読するよう指導するのが一般的なようです。これに従うと、「平家物語」中の「向かふ」「たまふ」や、「おくのほそ道」中の「行き交ふ」は、それぞれ「ムコー」「タモー」「ユキコー」と読むのが適切かと思うのですが、いかがでしょうか。
【対象】
令和3年度版「新しい国語」

 日本語の動詞の発音は、現代語として今の読み方に定着するまでにさまざまな変遷をたどってきました。例えば「買ふ」の読み方は、カフ→カウ→コー→カウと変化し、現代語では「カウ」という発音で定着しています。「平家物語」中の「向かふ」、「おくのほそ道」中の「行き交ふ」の読み方についても、「ムカフ→ムカウ→ムコー→ムカウ」、「ユキカフ→ユキカウ→ユキコー→ユキカウ」と、時代によって変化したと考えられますが、現代語として定着している発音のほうが意味を捉えやすいと判断し、教師用指導書の音声CDではそれぞれ「ムカウ」「ユキカウ」と朗読しています。なお、「日本国語大辞典 第二版」(小学館)では、文語の発音として「ムコーとも」「ユキコーとも」と付記されています。
 また、古語の「たまふ」には、一般に「タマウ」と「タモー」の両方の読み方が通用しています。「たまふ」は現代語にはない動詞ですが、もし現代語として残ったならば、他の動詞の変遷に鑑みると、「タマウ」として定着したものと推測できます。そのため、音声CDでは「タマウ」と朗読していますが、過去に「タモー」という発音もあったことから、古典的な味わいを重視して「タモー」と読むように指導したとしても問題はありません。古語特有の動詞「さぶらふ」の読み方についても、「たまふ」と同様のことがいえます。
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